記憶を継ぎ、機能を纏う。
暮らしに寄り添う「多機能な和の庭」
庭は、家族の歴史そのもの。
千代田町A様邸。家の建て替えに伴う、庭の全面リニューアルプロジェクトです。
しかし、私たちの仕事は「全てを更地にして新しくする」ことではありません。A様が大切にしてきた庭木、歴史を見守ってきた庭石。それらを救出し、新たな命を吹き込むことこそが使命です。
移植・仮植えから始まり、最強木材ウリンのデッキ、大型カーポート、そして鳥海石の石庭へ。
「残すもの」と「新しく機能するもの」が融合した、渾身の施工記録です。
解体前の庭。ここから「救出作戦」が始まる。
長年連れ添った木々を丁寧に切り離し、仮植えへ。
1. 救出と再生:門かぶり松の変身
解体工事が始まる前に、必要な樹木を掘り上げ、仮植えスペースへ退避させます。特に注目すべきは、門被りの五葉松。かつては門を覆っていたこの木を、新しい庭の「真木(シンボルの芯)」として生まれ変わらせるため、剪定と根回しを行いました。
不格好だった松を、剪定で「真木」の姿へ。
命を繋ぐ作業。根を痛めぬよう慎重に掘り上げる。
2. 生活の基盤:ウリンデッキとスロープ
新居が完成し、最初に着手したのは「生活動線」。洗濯物を干すためのデッキは、耐久性最強の「ウリン材(鉄の木)」を使用。ビスが折れるほど硬い木ですが、腐食知らずで数十年の安心を提供します。 さらに、玄関ポーチへ続くスロープも作成し、バリアフリーな動線を確保しました。
まずはここから。洗濯動線の確保。
重厚なウリン材。経年変化で美しいシルバーグレーになる。
硬すぎてビスが入らない。下穴用とビス用、二台のインパクトで挑む。
ビスの頭が出ないよう、丁寧に皿取り加工を施す。
ノーメンテナンスで長持ち。本物の木の温もり。
奥様のご要望で布団干し用のフェンスも設置。
玄関ポーチへ続くスロープの下地作り。
既存ポーチと同じタイルで仕上げ、違和感ゼロに。
3. 外構の骨格:大型物置とカーポート
暮らしを支えるハード面の整備。イナバの大型物置と、幅広のカーポートを設置。 さらに、古い庭にあった物置も廃棄せず、田熊造園の置き場で再利用。良いものは長く使う、それが我々の流儀です。
収納力抜群の大型物置。
雨の日も安心の幅広タイプ。
見えなくなる基礎こそ、ガッチリと。
美しい土間コンクリートの完成。
20年以上前の物置でも、イナバならまだ使える。お客様が不要とおっしゃっても、我々が引き取り活用します。それがモノへの敬意です。
錆びていても骨格は強い。さすがイナバ。
ドナドナされていく物置。第二の人生へ。
弊社の置き場で現役続行!
跡地もきれいに整地。
4. 庭の再生:土壌改良と石組み
仮植えしていた樹木を戻し、庭づくりを本格化させます。地盤が低かったため、良質な赤土を搬入してレベルを調整。そこに「鳥海石」を組み、庭に骨格を与えます。
再び出番を待つ木々たち。
新しい場所へ、丁寧に植え戻す。
土が良いと、木も元気に育つ。
フラットなキャンバスが出来上がった。
いよいよ石の出番。
力強い表情の鳥海石。
記念すべき一石目。
既存の石と新しい石を組み合わせる。
5. 景色の創造:枯れ滝と植栽の調和
庭の中心には、作り直した五葉松を「真木」として配置。さらに、水が湧き出し流れる様子を石で表現した「枯れ滝組み」を作庭。伊予石の水鉢と枝垂れ梅を添え、四季を感じる和の空間を演出します。
見事に生まれ変わった五葉松。庭の主役。
石の顔を見ながら、景色を作っていく。
見えない裏側も手を抜かない。「勿体ない」と言われるほどの出来。
水が染み出してくるイメージで。
お客様が一目惚れした水鉢。
花が咲くのが待ち遠しい。
デッキの高さに合わせ、庭への降り口に。
6. 動線の美学:多彩なアプローチ
稲荷様、畑、裏カーポート、東屋。それぞれの場所へ続く道を、既存の鉄平石や瓦、そして新たに仕入れた特大の鉄平石を使って繋ぎました。ただ歩くだけでなく、歩くこと自体が楽しくなるような園路です。
極寒の中、スタッフが丁寧に並べた流れ。
頑張りの成果。美しいライン。
瓦と鉄平石で、厳かな雰囲気に。
畑へ続く小道。
滅多に出ない特大サイズ。
迫力が違う。
一枚一枚、慎重に。
豪快かつ繊細に。
大石に負けないアクセントを添える。
水に濡れると、鉄平石は本領を発揮する。
優しい緑を添えて、空間を和らげる。
若葉の季節が待ち遠しい、緑のトンネル。
ギリギリのスペースを攻めるプロの技。
まさかの人力施工。情熱の証。
ご主人のDIY東屋!プロ顔負けの出来栄え。
全ての動線が繋がった。
完 成:記憶と未来を繋ぐ庭
古い庭の記憶を残しつつ、新しい暮らしに寄り添う機能的な庭へ。
四季折々の花、水の音、そして家族の笑顔。
ここからまた、新しい歴史が刻まれていきます。
春の訪れを告げる枝垂れ梅。
石、緑、水が調和した空間。
A様、長期間にわたる工事をお任せいただき、本当にありがとうございました。
これからも、この庭がご家族の暮らしに寄り添い、
季節の楽しみが増えていくことを心より願っております。
