父が育てた命を、次代へ繋ぐ。
既存樹木と石が織りなす「再生の和庭」
受け継がれる100種の想い。
佐野市Y様邸。そこにはお父様が苗木から大切に育てられた、多種多様な樹木が溢れていました。すべてを残すことは難しくとも、主役となる木を厳選し、その魅力を最大限に引き出すために庭を「再構成」する。これは、歴史を尊重しつつ、新しい家族の風景を創り上げる再生の記録です。
施工前。苗木から育った想い出の森。
100種もの植木から、主役を選び抜きます。1. 断腸の伐採と養生:すべては活かすために
寂しそうなおじいちゃんに申し訳ない気持ちを抱えつつ、心を鬼にして伐採を開始。せめてもの敬意として、最高に切れ味の良いチェンソーで丁寧に作業します。残す木には移植の負担を減らすため、養生剪定を施しました。
心を鬼にして、新しい景色への第一歩。
「今までお疲れ様」という想いを込めて。
移植に備え、枝葉を整える養生剪定。2. 移植:手掘りで守る「想い出の根」
長年この地に根を張った木。重機で強引に引き抜けば根鉢が崩れます。すべて手作業で掘り上げ、根巻き。寒さや日焼けから守るための「幹巻き」も、人間でいう着物を着せるように、一切の手抜きなしで行います。
根の広がりを読みながらの手掘り。
職人の四種の神器で命を守る。
不要な根を抜き、下地を整える。
想像以上の広さが現れました。
仮植えも本植えと同じ精度で。
寒さと日差しから守る「幹巻き」。3. 土台:大型ダンプ7台分の赤土投入
伐採、伐根、移植を終え、いよいよ土台づくり。大型ダンプ7台、計70立米もの赤土を贅沢に搬入。最近の住宅事情では考えられないほどの土を盛り、しばらく落ち着かせる期間を設けます。
整地が終わり、キャンバスが整った。
土が落ち着き、石工事開始。4. 骨格:鳥海石と六方石、そして「尽き棒」
土が落ち着いたところで石を配置。モダンさを引き立てる六方石も採用。原始的ですが、丸太の「尽き棒」でガンガン突き込むことで、石はガッチリと不動のものとなります。これが田熊の「和」の骨格です。
モダンさを引き立てる六方石。
特注強化ダンプで巨石を運ぶ。
ユニックからユンボへ移し替え。
一点の曇りもない配置を狙う。
「尽き棒」でガッチリ固める。5. 魂:松の帰還と300本のサツキ
移植した松やチャボヒバを据え直し、新植の紅シダレモミジやヤマボウシを配置。300本ものサツキを一本ずつ形を見ながら植え込み、ピシッと刈り込みます。5m級のヤマボウシが、高い屋根に負けない迫力を添えます。
お父様の松が庭の核になる。
最高のおやつ、芋フライパワー!
緑が宿り、景色が動き出す。
新緑の季節への楽しみを仕込む。
歴史ある木が新しい庭に馴染む。
圧巻のサツキ300本!
向き、高さをすべて見極める。
刈り込みで「締まり」を出す。
骨格が完成してきました。
建物に負けない5m級を据える。
歴史を感じさせる見事な根元。
前庭との繋がりをカエデで演出。
ここはサツキを使わない、粋な石組み。6. 導線:伊予石と諏訪鉄平石の饗宴
和室前には濡れると美しく輝く四国の「伊予石」。そこから大判の諏訪鉄平石を、庭を楽しみながら歩けるよう捻りを加えながら据えていきます。ふと立ち止まりたくなる「間」を大切にしたアプローチです。
濡れた時の色彩がたまらない伊予石。
重厚な鉄平石を据えていく。
石が動かぬよう、念入りに。
庭を回遊させる「捻り」の動線。
玄関まで贅沢な石畳を歩く。
ふと立ち止まりたくなる、庭の「間」。7. 彩り:2400ポットのタマリュウと水鉢
仕上げの下草は、なんとタマリュウ2400ポット。玄関脇はロックガーデン風、枯滝には自生感を出すヤブラン。真っ白な御影の鉄鉢をアクセントに、砂利を敷き込み「光と影」で庭に奥行きを完成させました。
怒涛の2400ポット植え。
ロックガーデン風の力強い足元。
「生えてきた」感を出すヤブラン。
玄関脇、完成!
前庭にも彩りが戻りました。
花や紅葉を浮かべる風流な鉄鉢。
砂利を入れると庭が「浮き出る」。
石組みの中で輝く白。
水の流れを石の向きで表現。
五色砂利と白玉石でみずみずしく。
夜の魔法。施主様こだわりのライティング。
前庭、ここに完結。8. 番外編:近所も驚いた「築山」の秘密
工事の都合上、一時的に大量の赤土を積み上げ「築山」に。近所の方に驚かれましたが、これも後の家庭菜園や玄関脇のシャラ、ドウダンツツジを最高の状態で植えるための「中継点」。人間ユニック(ユンボ)が大活躍しました。
異様な光景(笑)。土の中継地点です。
近所の人も「山を造るのかい?」と驚く。
山を崩し、最終的な形へ。
想い出のドウダンが新たな場所へ。
アプローチをさらに伸ばします。
通称「人間ユニック」。90kgも楽々。
長いアプローチと家庭菜園スペース。
いよいよ最後の「家の顔」へ。
総重量7トンの石の絨毯。
一枚80kg。気合で据え付けます。
大きなポーチに負けない迫力。
歩くたびに心が弾む距離感。
門柱と階段が一体となったデザイン。
左側、静謐なブルーゾーン。
砂利が入ることで御影石が引き立つ。
落ち着いた和モダンの完成。
右側、鮮やかなグリーンゾーン。
フラットな芝と最低限の植栽。完 成:三つの部屋の空気、庭へと流れる
キッチン(洋)、居間(和モダン)、和室(古民家)。建物の異なる三つの空気を庭へと落とし込みました。
お父様が育てた松が、この景色に深みと歴史を刻みます。
Night Scene - 庭が深まる静寂の時間 -
光と影のドラマが始まります。
水鉢が浮かび上がる幽玄な世界。
石の輪郭が浮き立ち、奥行きが深まる。
いつまでも眺めていたくなる夜の景。
この庭を眺めながらの酒、最高です!!
追加工事(2011年):背景が庭を、覚醒させる。
2011年、ウッドフェンス工事をご依頼いただきました。背景を整えることで、既存の緑と石が劇的に美しく引き締まります。レッドシダーの立て板と、それを20年守るウリンの柱。1.8mmの間隔が、完璧な陰影を生み出しました。
置き場での入念な表面加工と塗装。
重量に耐える、ボイド管の堅牢基礎。
準備が半分。置き場での仕事が品質を決める。
いざ、背景の魔法をかけに。
最強の木材、ウリンの重厚な柱。
2.5mm厚のガッチリした立て板。
基礎こそが、フェンスの命。
一本一本、通りと高さを完璧に。
板を支える胴縁を組み上げる。
不動の基礎が完成。
板を張る前の骨格完成。
一気に景色が変わり始めます。
拘りの1.8mm間隔。光の透け具合が絶妙。
横から見れば一枚の壁。重厚です。
緑が覚醒した。背景の力、恐るべし。Before & After - 背景がもたらす深み -
完成後:奥行きが鮮明になり、広く見える。
作庭時:緑が空に溶けてしまっている。
完成後:光と影が生まれ、庭がシャープに。





Y様、お父様の想いを受け継ぐこの庭が、
フェンスという背景を得て、本当の完成を迎えました。
美味しいおやつとお酒、本当にありがとうございました!
これからも末永いお付き合いを、宜しくお願い申し上げます。
